ローマ書

   まえがき

1章 1パウロ、キリスト・イエス、召されて神の福音のため選ばれた使徒から--2この福音は、神がその預言者たちによって聖書でかねて約束されたもので、3そのみ子についてのことです。彼はによればダビデの末から生まれ4聖い霊によれば死人たちからの復活によって力ある神の子と定められた方、すなわちわれらの主イエス・キリストです。
 5われらはそのみ名のために信仰の従順がすべての民に及ぶようにと、彼によって恩恵と使徒性を受けました。6あなた方も、民の中にあって、イエス・キリストへと召された人々です--7神に愛され、召された聖徒、ローマにある皆さんへ。われらの父なる神と主イエス・キリストからの恩恵と平和があなた方にありますように。

   執筆の動機

 8まず、イエス・キリストによって、あなた方皆さんのためにわが神に感謝したいのは、あなた方の信仰が全世界にいい伝えられていることです。9神がわが証人です。わたしはわが霊によって、すなわちみ子の福音によって神に奉仕し、つねに祈りのうちにあなた方を覚えています。10神のみ心によって、いつかはあなた方のところへ行くよい道が開かれるようお願いしています。11本当にあなた方にお会いしたく思います。あなた方の支えに何か霊の賜物をお分けしたいのです。12いや、あなた方の、またわたしの、お互いの信仰によって御地でともに慰められたいのです。13兄弟よ、このことを知らずにはいないでください。ほかの異邦人のところでと同じく、御地でも何か実りを得るために、たびたび御地へ行こうと思い立ちましたが、今まで妨げられています。14ギリシア人にも異人にも、知識人にも大衆にもわたしは責任があります。15それでローマのあなた方にも福音を伝えたいのです。16わたしは福音を恥じません。これは神の力で、まずユダヤ人、さらにギリシア人をも、すなわち、信ずるものすべてを救うからです。17そこに、信仰から信仰へという神の義が示されています。聖書に、「信仰による義人は生きる」とあるとおりです。

   異邦人への神の怒り

 18神の怒りは人々のあらゆる不信と不義に対して天から示されています。人々は真理を不義で押えています。19そもそも神について知りうることは人々に明らかです。それは、神が彼らに現われたもうたからです。20というのは、神の見えぬ諸性質すなわち彼の永遠の力と神性は、世の創造以来、いろいろなみわざのうちに人々に感得されて見えているのです。したがって人々はいいわけできません。21人々は神を知りながら神として栄化し感謝せず、自分の考えに迷わされてむなしくなり、そのまちがった心は暗くなりました。22自分では賢いといいながら愚かになり、23朽ちぬ神の栄光と朽ちる人や鳥や獣や虫の像をとりちがえています。
 24それゆえ神は彼らが心の欲によって不潔をなすにまかせられました。彼ら自ら体をはずかしめるためです。25彼らは神の真理を偽りにかえ、創造主(つくりぬし)のかわりに被造物をあがめ、かつ拝みました。創造主こそとこしえに讃むべきです、アーメン。26このゆえに神は彼らを恥ずべき官能におまかせでした。女性はその自然な交わりを不自然な交わりにかえ、27同じく男性も女性との自然な交わりを捨てて互いに情を燃やし、男性と男性とが恥ずべきことを行ない、まちがいの当然の報いを身に受けています。28彼らは神を知ることを無価値としましたので、神も彼らを無価値な精神におまかせでした。それで、彼らはしてならぬことをしました。29彼らはあらゆる不義、悪意、むさぼり、悪念に満ちたもの、妬み、人殺し、争い、悪巧み、邪念でいっぱいのもの、陰口をいうもの、30悪口をいうもの、神を憎むもの、傲慢なもの、高ぶるもの、ほら吹き、策動家、親不孝、31無知、不誠実、無情、無慈悲のものです。32彼らは、このようなことをするものは死に当たるとの神の定めを知りながら、自分でそれをするばかりか、人がするのにも同意しています。

   ユダヤ人への神の怒り

2章 1それゆえ、すべて裁く人よ、いいわけはできません。他人を裁くというその点で、あなたは自らを裁いています、裁くあなたが同じことをしていますから。2われらは知っています、真理に従って神の裁きはそのようなことをする人々に及ぶことを。3お考えなさい、このようなことをする人々を裁き、自ら同じことをする人よ、あなたは神の裁きをのがれるでしょうか。4それとも、彼の善意と寛容と忍耐との豊かさをあなどって、神のあわれみがあなたを悔い改めに導くのがわかりませんか。5頑固な、悔い改めない心によって、あなたは神の正しい裁きの現われる怒りの日のお怒りを自らに貯えています。6神は各人にそのわざによって報われましょう。7忍耐をもってよいわざをし、栄光と誉れと不滅を求める人には永遠のいのちを、8私欲にかられ、真理に従わず、不義に従うものには怒りといきどおりをお与えになります。9苦しみとなやみはすべて悪をするもの、ユダヤ人をはじめギリシア人に、10栄光と誉れと平和はすべて善を行なうもの、ユダヤ人をはじめギリシア人に及びます。11神には偏見がないからです。

   知らずに守る律法

 12律法なしに罪を犯したものは、みな律法なしに滅び、律法の下に罪を犯したものは、みな律法によって裁かれましょう。13それは、律法を聞くものが神の前に義人ではなく、律法を行なうものが義とされるからです。14すなわち、律法を持たぬ異邦人が自然に律法のことを行なえば、律法はなくても、彼らにとって自らが律法です。15彼らは律法の行ないがその心に書かれていることを示しており、彼らの良心もそれを証し、彼らの考えも互いに訴え、または弁明もしてそれを示しています。16これらは、わが福音によれば、神がキリスト・イエスによって人々の隠れたことをお裁きの日に明らかになるでしょう。

   知って守らぬ律法

 17しかし、もしあなたがユダヤ人を名のり、律法に頼り、神を誇り、18律法から教えられてみ心を知り、何が大切かをわきまえ、19自ら任じて目しいの案内、闇の中のものの光、20無知なものの導き手、幼子の教師として、律法の中に形をとった知識と真理を持つとするならば、21人を教えて自らを教えないのですか。盗むなと説いて盗むのですか。22姦淫するなといって姦淫するのですか。偶像を忌みきらって宮荒しをするのですか。23あなたは律法を誇りながら、律法を破って神をはずかしめています。24「神のみ名はあなた方によって異邦人の間でけがされる」と聖書にあるとおりです。25律法を守れば割礼は役立ちますが、律法を破ればあなたの割礼は無割礼になります。26無割礼のものが律法の条項を守れば、無割礼は割礼と認められませんか。27したがって、肉において無割礼のものが律法を全うすれば、彼のほうがあなたを裁くでしょう、あなたは律法の文字と割礼がありながら律法を破っていますから。28それは、うわべのユダヤ人はユダヤ人でなく、肉によるうわべの割礼も割礼ではないからです。29隠れたところにあるユダヤ人こそ、また、文字によらず霊による 心の割礼こそ、人からでなく神からの誉れを受けるのです。

   ユダヤ人の特権

3章 1それなら、ユダヤ人の長所は何ですか。割礼の取柄は何ですか。2あらゆる点に多々あります。まず彼らは神のことばをゆだねられました3それはどういうことでしょう。あるものが不信であったとしても、その不信は神のまことを無にしますか。4断じて否です。人はすべて偽りでも神は真実とすべきです。これは、聖書にあるとおりです、「みことばによってあなたが正しいとされ、み裁きによって勝ちたもうため」と。
 5もしわれらの不義が神の義を明らかにするならば、何というべきでしょう。これは人間的にいうのですが、怒りをおくだしの神は不義ですか。6断じて否です。もしそうならどうして神はこの世をお裁きになれましょう。7けれども、もしわたしの偽りによって神の真実が増して彼の栄光になるならば、なぜそのわたしがなおも罪びととして裁かれねばなりませんか。8これは、ある人々がわれらのいうこととして中傷するのですが、「善を来させるために悪をしましょう」とならないですか。このような人が罰せられるのは当然です。

   義人はない

 9それならどうでしょう。われらに特権がありますか。全くありません。われらが前から主張してきましたように、ユダヤ人もギリシア人も皆罪のもとにいます。10聖書にあるとおり、
 「義人はない、ひとりもない。
 11良識の人はない。神を求める人はない。
 12皆が迷い、皆ともに身をもちくずした。善をする人はない。ただひとりもない。
 13彼らの喉は開いた墓のよう、その舌であざむき、唇の下にはまむしの毒がある。
 14口にはにがい呪いが満ちている。
 15足は血を流すに速く、
 16その道には破壊と悲惨がある。
 17平和の道を彼らは知らず、
 18その目の前には神へのおそれがない」。
 19さて、われらの知るように、すべて律法のいうことは律法の下にあるものに語られています。それはすべての口がふさがって全世界が神に対して罪びととなるためです。20律法の行ないによってはだれひとり神の前に義とされません。律法によっては罪を知るばかりです。

   恩恵による義

 21しかし今や律法に関係なく神の義が示されました。今や、といっても、それは律法と預言書によって証されているものです。22すなわち、イエス・キリストのまことによる神の義で、信ずるものすべてのためのものです。そこに差別はありません。23すべての人は罪を犯したため、神の栄光を欠いています、24しかし、代償なしに、神の恩恵によって、キリスト・イエスのあがないのおかげで、義とされるのです。25神はキリストを宥めの供え物として差し出されました。これは血を流すまでの彼のまことによるものです。このようなことは、人々の過去の罪を神ならではの忍耐で見のがしてご自身の義を示すためであり、26さらに、今の世でご自身の義を示すためでもあります。すなわち、ご自身が義にいますとともに、イエスのまことによるものを義とする方であるためです。
 27それなら誇りはどうなりますか。もう誇れません。それはどの律法によってですか。行ないの律法によってですか。否、まことの律法によってです。28われらの考えでは、律法の行ないとは別に、人はまことによって義とされます。29それとも、神はユダヤ人だけの神ですか。また異教徒の神でもありませんか。もちろん異教徒の神でもある、30神がひとりにいますかぎりは。神は、割礼あるものをまことによって、無割礼のものをもまことによって、義とされます。31まことのためにわれらは律法を無にするのでしょうか。断じて否です。むしろ律法を強化するのです。

   アブラハムの信仰

4章 1それでは、われらの肉の父祖アブラハムが得たものは何であるといいましょう。2もしアブラハムが行ないによって義とされたなら、誇っていいわけです。しかし神に対してではありません。3聖書は何といいますか。「アブラハムは神を信じ、それが彼の義と認められた」とあります。4行ないをするものにとっては、報酬は恩恵ではなくて義務とみなされます。5行ないをしないものにとってはすなわち不信のものを義となさる方を信ずるものにとっては、その信仰が義と認められます。6同じようにダビデも、行ないに関係なく神が義と認められる人のさいわいを讃美します、7さいわいなのは不法をゆるされ、罪をおおわれた人。8さいわいなのは主が罪を認められぬ人」と。

   無割礼のときの義

 9さて、この讃美は割礼あるものについてですか、無割礼のものについてもですか。われらはいいます、「アブラハムの信仰が義と認められた」と。10どんな場合にそう認められましたか。割礼されてからですか、無割礼のときですか。割礼されてからではなく、無割礼のときです。11彼が割礼という徴を受けたのは、無割礼のときの信仰の義の保証としてです。それは彼が無割礼で信じて義と認められるものすべての父となるためです。12そしてまた、割礼があるだけでなく、われらの父アブラハムの無割礼のときの信仰の跡に従う人々の父になるためです。

   世界の相続人

 13世界の相続人になるとの約束がアブラハムまたその末になされたのは、律法によらず、信仰の義によるものです。14律法によるものが相続人ならば、信仰はむなしく、約束は無になります。15律法は怒りをおこします。律法のないところには違反もありません。16それゆえ、この約束は(律法によらず)信仰によります。恩恵によって、彼の末すべてに、すなわち、律法による末だけでなく、アブラハムの信仰の末にも、約束が確保されるためです。彼はわれらすべての父です。17聖書に、「わたしはあなたを多くの民の父に定めた」とあるとおりです。それは、彼が信じた神、すなわち、死人を生かし、無いものを有るものとしてお呼び出しになる方の前においてです

   信仰と希望

 18彼は望みえないことを望みつつ信じました。それで、「あなたの末はかくも多かろう」といわれたとおり、多くの民の父になりました19百歳ほどであったので体が死んでおり、サラの胎も死んでいることを知りながら、信仰においては弱りませんでした。20不信をもって神の約束を疑わないばかりか、信仰において力づけられ、神に栄光を帰しました。21神はお約束のことをなす力がおありと確信していたのです。22それゆえ、彼は義と認められました。23聖書に「認められた」とあるのは、彼だけのためではなく、24われらのためでもあります。われらの主イエスを死人たちから復活させられた方を信ずるわれらも、そう認められねばなりません。25イエスはわれらの過ちのためにに渡され、われらが義とされるために復活させられた方です。

   不信のものへの愛

5章 1かく、信仰によって義とされて、われらは神に対して平和を得ています。これは主イエス・キリストのおかげです。2彼のおかげでわれらは今立つところのこの恩恵へ信仰によって入れました。そして神の栄光への希望を誇りにしています。3そのうえ、苦難にあっても誇ります。苦難は忍耐を、4忍耐は訓練を、訓練は希望を生むことを承知ですから。5この希望は恥をかかせません。われらに与えられる聖霊によって神の愛がわれらの心に注がれるからです。6キリストは、われらがなお弱かったときに、時をたがえず、不信のものたちのために死んでくださいました。7義人のために死ぬものはほとんどありません。善人のためには、あるいはいのちを惜しまぬものがあるでしょう。8しかし、まだわれらが罪びとであったときに、キリストがわれらのために死なれたことによって、神はわれらに愛を示されました。9まして、彼の血で義とされた今、彼によって怒りから救われるはずです。10敵でありながらみ子の死によって神と和解したのならば、まして和解したわれらはみ子のいのちによって救われるはずです。11そのうえ、主イエス・キリストによって今和解を受けたわれらは、彼によって神を誇るのです。

   アダムとキリスト

 12それで、こういえます。ひとりの人によってこの世に罪が入り、罪によって死が入りました。こうして、すべての人が罪を犯したので、すべての人に死が行きわたりました。13律法以前にも罪はこの世にありましたが、律法がなければ罪は数えられません。14しかし、アダムからモーセまで、アダムの背きと同じ罪を犯さなかった人々の上にも、死は王でした。アダムは来たるべきものの型なのです。
 15しかし(神の)賜物は過ちのごとくではありません。ひとりの人の過ちによってさえ多くの人が死んだのなら、まして神の恩恵とひとりの人イエス・キリストによる恩恵の賜物とが多くの人々に満ちあふれるわけです。16賜物はひとりの人が罪を犯した場合のごとくではありません。ひとりの人への裁きは処刑になりましたが、賜物は多くの過ちを義(無罪)にしました。17ひとりの人によって、すなわちひとりの人の過ちによってさえ死が王となったのなら、ましてあふれる恩恵と義の賜物とを受けるものは、ひとりのイエス・キリストによっていのちのうちに王となるわけです。18したがって、ひとりの人の過ちによってすべての人が処刑されたように、ひとりの人の義によってすべての人にいのちの義が与えられました。19すなわち、ひとりの人の不従順によって多くの人が罪びとになったように、ひとりの人の従順によって多くの人が義人になりましょう。20律法が入ってきたのは過ちが増すためです。しかし、罪が増すところ恩恵が満ちあふれました。21それは、罪が死をもって王であったように、恩恵も義をもって王となり、われらの主イエス・キリストによって永遠のいのちへ導くためです。

   キリストへの洗礼

6章 1それならわれらは何といいましょう。恩恵が増すために罪にとどまるべきですか2断じて否です。罪に対して死んだわれらが、どうしてその中に生きえましょう。3それとも、あなた方は知りませんか、キリスト・イエスへと洗礼されたわれらは、皆彼の死へと洗礼されたことを。4実に、死への洗礼によってわれらは彼とともに葬られたのです。それは、父の栄光によってキリストが死人の中から復活されたように、われらも新しいいのちに歩むためです。5もしわれらが彼の死の形にならって彼と合わさるならば、復活の形においてもそうでしょう。6われらの知るとおり、われらの古い人が彼とともに十字架につけられたのは、罪の体が滅びて、もはや罪の奴隷にならぬためです。7死んだものは罪から解放されているからです。8われらがキリストとともに死んだのならば、彼とともに生きようこともわれらは信じます。9われらの知るとおり、死人の中から復活されたキリストは、もはや死にたまわず、死はもはや彼を支配しません。10彼が死にたもうたのは罪に対して一度だけ死にたもうたのであり、いま生きたもうのは神に対して生きたもうからです。11そのように、あなた方も、自らを罪に対して死んだもの、神に対してキリスト・イエスにあって生きるものとお考えなさい。12それで、罪をあなた方の死ぬべき体の王にして、その欲に従わないように。13また、あなた方の肢体を不義の武器として罪にまかせないように。死人の中から生きかえったものとして自らを神にまかせ、肢体を義の武器として神におまかせなさい、14罪はもはやあなた方を支配しませんから。あなた方は律法のもとにでなく、恩恵のもとにいるのです。

   罪の奴隷と義の奴隷

 15それならどうでしょう。律法のもとでなく恩恵のもとにいるからとて、われらはこれからも罪を犯すべきでしょうか。断じて否です。16このことをご存じありませんか。奴隷として服従するよう自らを人にまかせれば、あなた方はその奴隷として服従すべきであり、それは罪の奴隷として死に至るか、従順の奴隷として義に至るか、どちらかです。17しかし神に感謝します。あなた方は罪の奴隷でしたが、教えの型に入れられてそれに心から従い、18罪から解放されて義の奴隷にされました。19人間的ないい方をしますが、それはあなた方の肉の弱さのためです。肢体を奴隷としてけがれと不法にまかせて不法をしたように、今は肢体を奴隷として義にまかせて聖に向かいなさい。20罪の奴隷であったとき、あなた方は義に対して自由でしたが、21そのころ何の実を得ましたか。今なら恥じ入るようなものでした。それらの極(はて)は死です。22今や罪から解放されて神の奴隷にされ、あなた方は聖化への実を持っています。その極は永遠のいのちです。23それは、罪からの報酬は死であり、神からの賜物はわれらの主キリスト・イエスにあっての永遠のいのちだからです。

   新しい夫への解放

7章 1それとも、ご存じありませんか、兄弟たちよ、わたしは律法を知る人々に申しますが、律法は人が生きている間だけ人を支配します。2すなわち、とついだ女は夫が生きている間は律法によって彼に結ばれていますが、夫が死ねば、夫の律法から解放されます。3したがって、夫が生きている間に、ほかの男に行けば悪女と呼ばれますが、夫が死ねば、その律法から自由なので、ほかの男のものになっても悪女にはなりません。4それゆえ、わが兄弟たちよ、キリストの体によってあなた方も律法に対して殺されたのです。これはあなた方がほかのもの、すなわち死人の中から復活された方のものになって、われらが神に対して実るためです。5それは、われらがにあったときには、律法による罪の欲情が肢体の中にはたらいて、われらが死への実りをしたからです。6今や縛られていた律法に対して死んで、律法から解放されたので、われらは古い文字によらず、新しい霊によって神に仕えるのです。

   律法は聖

 7それなら、われらは何といいましょう。律法は罪でしょうか。断じて否です。むしろ律法によらねばわたしは罪を知らなかったのです。律法が、「欲ばるな」といわねば、わたしは欲を知らなかったでしょう。8しかし罪は掟によって機会を得、あらゆる欲をわがうちにおこしました。律法がなければ罪は死んだものです。9わたしはかつては律法なしで生きていました。しかし掟が来ると、罪が生きかえって、10わたしは死にました。そして、いのちのための掟そのものが、死のためのものになったことがわたしにわかりました。11罪は掟によって機会を得てわたしを迷わし、掟によって殺しました。12それゆえ、律法は聖であり、掟も聖で義で善です。

   みじめな人間

 13それなら、善がわたしにとっては死になったのでしょうか。断じて否です。罪が罪として現われるために善によってわたしに死をもたらしたのです。これは罪が掟によっていっそう罪らしくなるためです。14われらが知るように、律法は霊的なものです。しかしわたしは肉的なもので罪のもとに売られています。15わたしは自分がしていることがわかりません。欲することはせず、いとうことをこそしています。16しかし、欲しないことをしているなら、律法はよいものと認めているわけです。17すると、それをするのはもはやわたしではなく、わがうちに住む罪です。18わたしは知っています、わがうち、すなわちわが肉のうちには、善が住まないことを。意欲はわたしにあっても、善の実践がともないません。19欲する善はせず、欲しない悪をこそしています。20しかし、欲しないことをするのはわたしでなくて、わがうちに住む罪がそれをするのです。21それで、善をなそうと欲するわたしに、悪をもたらす律法があることがわかります。22わたしは内の人によって神の律法をよろこびますが、23わが肢体には別の律法が見えます。それがわが精神の律法と戦って、わが肢体の中にある罪の律法の中にわたしを捕えるのです。24わたしは何とみじめな人間でしょう。だれがわたしをこの死の体から救ってくれましょう。25われらの主イエス・キリストによって神に感謝します。結局わたし自身、精神では神の律法に、肉では罪の律法に仕えているのです。

   肉から霊へ

8章 1それゆえ、今や、キリスト・イエスにあるものは何の罰も受けません。2キリスト・イエスにあるいのちの霊の律法が、あなたを罪と死の律法から解放したからです。3律法が肉のため弱体になってできなくなったことを、神はなしとげられました。すなわち、(人の)罪のゆえにみ子を罪の肉の形でつかわし、肉において罪を罰せられたのです。4それは、肉によらず霊によって歩むわれらの間に律法の要求が満たされるためです。5それは、肉に従うものは肉のことを、霊に従うものは霊のことを求めるからです。6肉を求めれば死、霊を求めればいのちと平和です。7肉を求めるのは神への敵対です。肉は神の律法に従わず、従えもしませんから。8肉にあるものは神をおよろこばせできません。9しかしあなた方は、神の霊があなた方の中にお住まいである以上、肉にでなく霊にあるものです。キリストの霊を持たねば、その人は彼のものではありません。10しかし、キリストがあなた方の中におられるならば、体は罪によって死んでも、霊は義によって生きます。11イエスを死人たちから復活させた方の霊があなた方の中にお住まいならば、キリスト・イエスを死人たちから復活させたその方は、あなた方の中に住むその霊によって、あなた方の死ぬべき体をも生かされましょう。

   聖霊の導き

 12それゆえ、兄弟たちよ、われらには責任があります。しかし肉に対しての、肉によって生きる責任ではありません。13あなた方が肉によって生きるなら、死にましょう。霊で体のはたらきを殺すなら生きましょう。14神の霊に導かれるものは皆神の子です。15あなた方はまたもやおそれさせる奴隷の霊を受けたのではなく、子としての霊を受けたのです。この霊によってわれらは、アバ、父上、と呼ぶのです。16その霊自身がわれらの霊とともに証するように、われらは神の子どもです。17子どもである以上、世継ぎでもあります。キリストと栄光をも共にするように、彼と苦しみを共にする以上、神の世継ぎであり、キリストとともに世継ぎです。

   被造物のうめき

 18わたしは考えます。今の時の苦しみは、われらに現われようとする栄光に比べると、いうに足りません。19被造物は熱望して神の子たちが現われるのを待っています。20被造物がむなしさに服したのは、自ら進んでではなく、服させた方によってです。21そこに望みがあります。被造物自身も滅びの奴隷状態から解放されて、神の子らの栄光の自由を与えられようからです。22われらは知っています、全被造物が今にいたるまで、ともにうめき、ともに産みの苦しみをしていることを。23そればかりでなく、霊の初穂を持つわれら自身も、顧みてうめき、子とされることを、すなわちわれらの体のあがなわれることを待っています。24われらはこの望みのゆえに救われているからです。見える望みは望みではありません。見えるものを、そのうえ何で望みましょう。25われらに見えぬものを望む以上、忍耐して待つのです。26同じように、霊もわれらの弱さを共に助けに来ます。何を祈ったらよいかわかりませんが、霊自身が口でいいえぬうめきをもってとりなされます。27こころごころを見抜く方は霊の思いが何かをご存じです。霊が神に従って聖徒のためにとりなされるからです。28われらは知っています、神を愛するものには神が協力してすべてを善になさることを。彼らは聖旨に従って召されたものだからです。29あらかじめご存じのものを、み子と像(かたち)を同じくするよう神は予定されました。これはみ子が多くの兄弟の長子になられるためです。30これら予定されたものをばお召しにもなり、お召しのものをば義ともなさり、義となさったものをば栄化もなさいました。

   神の愛の絶対

 31それではわれらは何といいましょう。神がわれらの側ならば、だれがわれらに敵しましょう。32おのがみ子を惜しまずにわれらすべてのために死に渡された方が、どうしてみ子といっしょに万物をわれらに恵まれないでしょうか。33だれが神に選ばれたものを訴えましょう。義となさるものは神です。34だれが罰しましょう。なくなった方、否、むしろ復活された方であるキリスト・イエスが神の右にいまして、われらにとりなしもなさいます。35だれがわれらをキリストの愛から離しましょう、苦難か、なやみか、迫害か、飢えか、裸か、危険か、剣か。36聖書にあるように、あなた(神)のためわれらはひねもす死に、ほふられる羊と見られています。37しかしこれらすべてのうちにも、われらを愛された方によって、われらはかち得てあまりあります。38わたしは確信します、死もいのちも、天使も司も、現状も未来も諸権力も、39高きも低きも、そのほかいかなる被造物も、われらの主キリスト・イエスにある神の愛からわれらを離せないことを

   同胞ゆえの痛み

9章 1わたしはキリストにあって真実をいい、うそはいいません。わが良心も聖霊によって証します。2それはわが心に大きな悲しみと絶えぬ痛みがあることです。3肉にある同族の兄弟たちのためならば、わたし自身は呪われてキリストから離れても、と祈りつづけました。4彼らはイスラエル人です。(神の)子の資格栄光契約、律法、礼拝、約束は彼らのものです。5父祖たちは彼らのもの、肉によればキリストも彼らの出です。彼は万物の上にいます神としてとこしえに讃むべきです。アーメン。

   約束の子

 6しかし神のことばが廃ったわけではありません。イスラエルの出が皆イスラエル人ではなく、7アブラハムの末が皆その子どもではありません。「あなたの末として召されるのはイサクの家系です」。8すなわち肉の子どもが神の子どもではなく、約束の子どもが末と認められます。9約束のことばは、「この季節にまた来ましょう、そしてサラに息子ができるでしょう」です。10そればかりでなく、リベカもそうで、ひとりの男、すなわちわれらの先祖のイサクによって身ごもりました。11ふたりがまだ生まれず、善も悪もしないうちに、神の選びによる予定は変わらず、12それが(人の)行ないによらずお召しになる方によるようにと、「兄は弟に仕える」とリベカにいわれました。13「わたしはヤコブを愛したがエサウを憎んだ」と聖書にあるとおりです。

   神意の純粋

 14それならわれらは何といいましょう。神に不義がありますか。断じて否です。15モーセにいわれています、「わたしはあわれみたいものをあわれみ、いつくしみたいものをいつくしむ」と。16それゆえ、それは人の意欲や努力によらず、神のあわれみによります。17聖書はパロにこういいます、「わたしがあなたを立てたのは、あなたによってわが力を示すため、またわが名が全地に伝わるためにほかならない」と。18したがって神は思うままにあわれみ、思うままに頑になさいます。

   あわれみの器

 19そこであなたはいうでしょう、「なぜ神はなおも人をおとがめですか、だれがみ心にさからえますか」と。20ああ人よ、神にいいさからうとはいったいあなたは何ものですか。造られたものが造ったものに、「なぜこのようにわたしを造ったか」といえましょうか。21それとも、陶器師は、同じ粘土の塊からひとつを名誉への器、ひとつを不名誉への器にこしらえる権限を持ちませんか。22もし神が怒りを示し、力を知らせようとお思いで、滅びのためにつくられた怒りの器を多くの寛容をもって忍ばれたとすると、23そしてそれは、栄光のためあらかじめそなえられたあわれみの器に、自らの豊かな栄光をお知らせになるためであったとすると、どうでしょう。24神はあわれみの器として、われらをもお召しでした。ユダヤ人からだけでなく、異邦人からもです。

   異邦人優先

 25「ホセア書」でもいわれています、「わが民でないものをわが民と呼び、愛されぬものを愛されるものと呼ぼう。26あなた方はわが民でない、といわれたその場所で、彼らは生ける神の子と呼ばれよう」と。
 27イザヤもイスラエルについて叫びます、「たとえイスラエルの子らの数が海の砂のようでも、残りのものだけが救われよう。28主はみことばをなしとげ、切りをつけて地に実現されようから」と。
 29また、イザヤは預言しました、「もし万軍の主がわれらに末を残されなかったら、われらはソドムやゴモラと同じになったろう」と。
 30それなら何といいましょう。義を求めなかった異邦人が義、すなわち信仰による義を得ました。31反対に、イスラエルは義の律法を求めつつも律法に達しませんでした。32なぜですか。信仰によらず、行ないによって得られるごとくにしたからです。つまずきの石につまずいたのです。33聖書にあるとおりです、「見よ、シオンにつまずきの石とさまたげの岩を置く。これを信ずるものははずかしめられまい」と。

   律法の終わり

10章 1兄弟たちよ、わが心からの望みと彼らのための神への願いは彼らの救いです。2わたしは彼らのために証しますが、彼らは神に対して熱心です。しかし認識がありません。3すなわち、神の義を知らず、おのが義を立てようとして、神の義に従いませんでした。
 4キリストは信ずるものすべてが義とされるため、律法の終わりとなられました。5モーセが律法による義について書いています、「それを行なう人がそれによって生きる」と。6しかし信仰による義はこういいます、「心の中で、だれが天に上るか、というな。これはキリストを引きおろすこと。7また、だれが地の底に下るか、ともいうな。これはキリストを死人から連れのぼること」と。8これは何をいうのでしょう。「ことばはあなたに近い。あなたの口に、あなたの心にある」という、これこそわれらの説く信仰のことばです。9口で主イエスを告白し、心で神が彼を死人たちから復活させられたと信ずるなら、あなたは救われます。10心で信じて義に至り、口で告白して救いに至るのです。11聖書はいいます、「すべて神を信ずるものははずかしめられまい」と。12ユダヤ人も異邦人も区別なしです。同じ主が万民の主で、彼を呼ぶものすべてを豊かに恵みたまいます。13「主を呼ぶものはすべて救われる」からです。

   イスラエルの責任

 14さて、信じたことのないものを、どうして呼びえましょう。聞いたことのないものを、どうして信じえましょう。伝えるものがなくて、どうして聞きえましょう。15つかわされないで、どうして伝ええましょう。聖書に、「よいことを伝える人の足の美しさよ」とあるとおりです。
16しかし皆が福音に従ったのではありません。イザヤはいいます、「主よ、だれがわれらに聞いたことを信じましたか」と。17信仰は聞くことから、聞くことはキリストのことばからです。18しかしわたしはいいます、彼らは聞かなかったのでしょうか、と。そうではなくて、「その声は全地に、そのことばは世界の果てにまで及んだ」のです。19なお、わたしはいいます、イスラエルは知らなかったのでしょうか、と。まずモーセがいいます、「わたしは民でないものによってあなた方を妬ませ、愚かな民によってあなた方を怒らせる」と。20イザヤもあえていいます、「わたしを求めなかったものに姿を見せ、わたしをたずねなかったものに現われた」と。21彼はまたイスラエルについていいます、「ひねもすわたしは手をのべた、不従順で反抗的な民に」と。

   恩恵による選び

11章 1そこでわたしは考えます、神はその民をお捨てなのか、と。断じて否です。わたしもイスラエル人で、アブラハムの末、ベニヤミンの族(やから)です。2神はあらかじめお認めのご自身の民をお捨てではありません。それとも、あなた方は聖書がエリヤのところで何というか、ご存じないのですか。彼はイスラエルをこう神に訴えています、3「主よ、彼らはあなたの預言者たちを殺し、あなたの祭壇をこわし、そしてわたしひとりが残され、そのわたしのいのちをねらっています」と。4しかし、彼へのお告げは何でしょう、「わたしはバアルに膝をかがめなかった男七千人をわがために残しておいた」と。5同じように、今の時にも、恩恵の選びによる残りのものがあります。6恩恵による以上、もはや行ないにはよりません。さもないと、恩恵がもはや恩恵でなくなりますから。
 7それならどうでしょう。イスラエルは求めるものを得ず、選ばれたものが得ました。そしてほかのものたちは頑にされました。8聖書にあるとおり、神は彼らにしびれた心と、見えぬ目と、聞こえぬ耳とを与えて、こんにちに至っています。9ダビデもいいます、「彼らの食卓はそのわな、落し穴、つまずき、報いとなるように。10その目はくらんで見えなくなり、その背はつねにかがむように」と。

   異邦人の刺激

 11それでわたしは考えます、彼ら(イスラエル人)がつまずいたのは倒れてしまうためでしょうか、と。断じて否です。彼らの過ちによって救いが異邦人に及び、それによって彼らに妬みをおこさせるためです。12彼らの過ちが世の富となり、彼らの落度が異邦人の富となるならば、まして彼らの完成のときはどんなでしょう。13あなた方異邦人にいいます。わたしは異邦人の使徒であるものとして、わが務めを名誉とします。14それはいかにもしてわが同胞を妬ませ、その何人かでも救おうと願うからです。15もし彼らの捨てられることがこの世の和解になるならば、彼らが受け入れられることは死人からいのちへでなくて何でしょう。16もし初穂のパンが聖ければ粉も聖く、根が聖ければ枝も聖いのです。17しかしもし枝のいくつかが折り取られ、野生のオリブであるあなたがそれにつぎ木されて油の豊かな根をともにするならば、18あなたはその枝に対して誇ってはいけません。誇ってもあなたが根を支えるのでなく、根があなたを支えているのです。19するとあなたはいうでしょう、枝が折り取られたのはわたしがつがれるためです、と。20よろしい。彼らは不信仰によって折り取られ、あなたは信仰によって立っています。高ぶって考えず、おそれなさい。21神は本来の枝さえ容赦されなかったなら、あなたをも容赦されますまい。22神のいつくしみときびしさをごらんなさい。倒れたものにはきびしさ、あなたには神のいつくしみがあります、もしあなたがいつくしみにとどまるならば。さもないと、あなたも切り落とされましょう。23彼らも、不信仰にとどまらないならば、つがれましょう。神にはふたたび彼らをつぐ力がおありです。24あなたは本来野生のオリブから切り取られ、本性に反して栽培されたオリブにつがれたのなら、ましてこれら本来の枝は自分のオリブにつがれましょう。

   全人類の救い

 25兄弟たちよ、この奥義を知らずにいないでください。それはあなた方が自分を賢いと思いあがらないためです。奥義とは、一部のイスラエルが頑になったのは異邦人の完成が訪れるときまでで、26こうして全イスラエルが救われよう、ということです。聖書に、「救い手がシオンから出、ヤコブから不信を遠ざけよう。27これこそ彼らとのわが契約、彼らの罪をわたしが除くそのときに」とあるとおりです。
 28福音によれば、彼らはあなた方ゆえに(神の)敵となり、選びによれば父祖たちのゆえに(神に)愛されるものです。29神の賜物も招きも取り消されないからです。30かつてはあなた方が神に不従順であって、今はこれらの人の不従順によってあわれまれたように、31これらの人も今はあなた方のためのあわれみに不従順ですが、それは彼らも、今あわれまれるためです。32神はすべての人を不従順へとお閉じ込めでしたが、それはすべての人をおあわれみになるためでした。
 33ああ、神のと知恵と知識の深さよ、なんとその裁きのきわめがたく、その道のはかりがたいことでしょう。
 34だれが主のみ心を知りましたか。だれが彼の相談役になりましたか。
 35だれがまず主に差しあげて、そのお返しを受けえましょう。
 36すべては彼から出、彼にたより、彼に帰します。栄光がとこしえに彼にありますように。アーメン。

   霊的な礼拝

12章 1それゆえ、兄弟たちよ、神の慈悲にたよってあなた方に勧めます。あなた方の体を、生き生きとした、聖らかな、そして神のお気に召すいけにえとしておささげなさい。それがあなた方の霊的礼拝です2また、この世の型にはまらず、新しい精神で自らを変容し、何が神のみ心か、善か、お気に召すか、完全か、を見わけうるようになさい。3わたしは与えられた恩恵によって、あなた方ひとりひとりにいいます。思うべきことをこえて思いあがらぬように。神が分かたれた信仰の量に従って節度ある思いをするように。4われらのひとつ体には多くの肢があり、すべての肢が同じはたらきをするのではないように、5大勢のわれらはキリストにあってひとつ体であり、おのおのが互いの肢です。6われらは与えられた恩恵に従って違った賜物を持っていますから、預言の賜物を持つならば信仰に応じてなさい。7奉仕するなら奉仕に、教師ならば教育に、8勧誘者なら勧誘に、応分の処置をなさい。施すものは純粋に、援助者は熱心に、慈善家はよろこんでなさい。

   愛による善

 9愛に偽りなく。悪をいとい、善に親しく。10兄弟愛をもって互いに愛しあい、尊敬をもって互いをまさるとなさい。11勤勉で倦まず、霊に燃え、主に仕え12希望のうちによろこび、苦難に耐え、たゆまず祈り、13協力して聖徒の欠乏を補い、旅人の接待につとめなさい。14あなたの迫害者を祝福し、祝福して呪いなさるな。15よろこぶものとともによろこび、泣くものとともに泣きなさい。16互いに思いを同じくなさい。高きを思わず、低きにつきなさい。「みずから賢いと思うな」です。17だれにも悪をもって悪に報いずすべての人の前でよいことを心がけなさい18できれば、せめてあなた方は、すべての人と平和を保ちなさい。19愛するものよ、自分で仕返ししなさるな。(神の)怒りにまかせなさい。聖書にあります、「主はいわれる、仕返しはわがもの、わたしが報いる」と。20むしろ、敵が飢えているなら食べさせ、渇いているなら飲ませなさい。こうするのはその(こうべ)に炭火をつむことです。21悪に負けず、善によって悪に勝ちなさい。

   権力への義務

13章 1人は皆、上に立つ権力に従うべきです。神によらぬ権威はなく、今ある諸権力は神によって立てられたものです。2それで、権力にさからうものは神の命にそむくものです。そむくものは自らに裁きを招くでしょう。3支配者は、善をするものにではなく、悪をするものにおそれられます。あなたが権力をおそれたくなければ、善をなさい。そうすれば権力からほめられましょう。4権力はあなたに善をそなえる神の召使いですから。しかしあなたが悪をすれば、おそれねばなりません。むなしく剣を帯びてはいませんから。権力は神の召使いで、悪をするものに怒りをおこす復讐者です。5だから服従が必要です、怒りのためだけでなく、良心のためにも。6それゆえ貢も納めるべきです。権力は神の奉仕人で、このことに力をつくしているのですから。7すべての人に債務を返しなさい、貢取りには貢を、税取りには税を、おそるべきものにはおそれを、尊敬すべきものには尊敬を。

   隣人愛

 8互いに愛することのほか、だれにも何も借りなさるな人を愛するものは律法を全うしたのです9姦淫するな、殺すな、盗むな、むさぼるな、そのほかどんな掟があっても、隣びとを自分のように愛せよ、のひとことにまとまるからです。10愛は隣びとに悪をはたらきません。それゆえ愛は律法の完成です

   救いの時の近さ

 11ご存じのようにこの時代はすでにあなた方が眠りから覚めるべきときです。今は信仰に入ったときよりも、われらの救いは近いのです。12夜がふけて、日が近づきました。闇のわざを脱ぎ捨てて、光の武具を身につけましょう。13日のあるとき、折目正しく歩みましょう、宴会と酩酊でなく、淫乱と放蕩でなく、争いと妬みでなく。14主イエス・キリストを着なさい。肉の思いを欲望にしないように。

   すべては主のため

14章 1信仰の弱いものをも受け入れなさい。異論をとやかくいわずに。2ある人は何でも食べうると信じ、弱い人は野菜だけを食べます。3(何でも)食べる人は食べない人をあなどらず、食べない人は食べる人を裁かないように。神はそのような人をもお受け入れですから。4他人の僕を裁くとは、あなたは何ものですか。彼が立つも倒れるもその主人次第です。彼は立ちえましょう、主人には彼を立たせる力がありますから。
 5ある人はこの日をかの日よりも重んじ、ある人はどの日も同じように見ます。おのおのが自分の心に確信すべきです。6一定の日を気にする人は主のために気にし、(何でも)食べる人は主のために食べます。彼は神に感謝するからです。食べない人も主のために食べないのです。彼も神に感謝するからです。7なぜなら、われらはだれも自分のためには生きず、だれも自分のためには死にませんから。8われらは生きれば主のために生き、死ねば主のために死ぬのです。生きようが死のうが、われらは主のものです。9キリストが死んで生きられたのは、死者と生者との主になられるためです。10それなのにあなたはなぜ兄弟を裁くのですか。また、あなたもなぜ兄弟をあなどるのですか。われらは皆、神の裁きの座の前に出ねばなりません11聖書にあります、「主はいわれる、わたしは生きている。すべての膝はわが前にかがみ、すべての舌は神を讃美しよう」と。12それゆえ、われらはひとりひとり自分について神に弁明せねばなりません。

   飲食について

 13それゆえ、もう互いに裁きますまい。むしろあなた方が兄弟に衝撃やつまずきを与えないようお決めなさい。14わたしは主イエスにあって知り、また確信しますが、何ものもそれ自体ではけがれてはいません。しかしけがれていると思う人があればそれはその人にけがれています。15食べ物のゆえに兄弟を悲しませるならば、あなたはもはや愛に歩いてはいません。あなたの食べ物で兄弟を滅ぼさないようになさい。キリストは彼のためにお死にになったのです。16あなた方のがけがされないようになさい。17神の国は食べ物や飲み物ではなく、聖霊による義と平和とよろこびです18このようにしてキリストに仕える人は神のお気に召し、人々にも信頼されましょう。19それゆえ、平和のこと、互いに建設的なことを努めましょう。20食べ物のために神のわざをこわさないようになさい。すべては清いが、食べてつまずかせる人にはそれは悪いものになります。21肉を食べず、ぶどう酒を飲まず、そのほかあなたの兄弟をつまずかせないのはよいことです。22あなたの持つ信仰を、あなただけで神の前にお持ちなさい。さいわいなのは自ら決めたことで自らを裁かない人です。23しかし疑うものが食べるならば、信仰によらないゆえに、罰せられます。信仰によらないものはすべて罪です。

   キリストの模範

 15章 1われら力あるものは力のないものの弱さを負うべきです。2自らをよろこばせてはなりません。われらのめいめいが隣びとをよろこばせ、その善になり建設をはかるようにしましょう。3キリストも自らをよろこばせはなさいませんでしたから。聖書にあるように、「あなたをののしるもののののしりがわが上に落ちた」のです。4前に書かれたことは皆われらの教えのために書かれたのです。それはわれらが聖書からの忍耐と慰めとをもって希望を持ちつづけるためです。5忍耐と慰めの神が、あなた方を、キリスト・イエスに従って互いに思いを同じくするようお導きのほどを。6これはあなた方がひとつ心で、ひとつ口で、われらの主イエス・キリストの神また父に栄光を帰するためです。
 7このゆえに、互いに受け入れなさい、キリストがあなた方を受け入れて神の栄光を現わされたように。8わたしはいいます、キリストが神の真実を示すために割礼あるものの奉仕人になられました、と。これは先祖たちの約束を確かにするためであり、9異邦人があわれみのゆえに神に栄光を帰するためです。聖書にあります、「このためにわたしは異邦人の間で神をたたえ、み名を讃めうたいます」と。10またいわれています、「異邦人よ、彼の民とともに楽しめ」と。11さらに、「すべての異邦人よ、主をたたえよ。すべての民よ、彼を讃めよ」と。12またイザヤはいいます、「エッサイの根ははえ、蹶起(けっき)者は異邦人を治めよう、異邦人は彼に望みを置こう」と。13希望の神が、信ずるという全きよろこびと平安とであなた方を満たし、聖霊の力であなた方を希望であふれさせたもうように。

   処女地でのはたらき

 14わが兄弟たちよ、わたし自身あなた方が善に満ち、あらゆる知識にあふれて互いに忠告する力もあることを確信しています。15しかしわたしは時として思い切った形でこの手紙を書きました。これは神からわたしに賜わった恩恵によって記憶を新たにしてもらうためです。16その恩恵とは、わたしが異邦人のためにキリスト・イエスに仕えるものとなり、神の福音のために祭司の役をつとめることでして、異邦人が聖霊によって聖められ、み心にかなうささげものになるためのものです。17それで、わたしはキリスト・イエスによって神に対しての誇りを持っています。18キリストがわたしを通じてはたらかれたことのほかには、わたしはあえて何もいいません。そのはたらきは、異邦人を従順にさせるためであり、ことばやわざにより、19徴や不思議の力により、聖霊の力によるものでした。そのおかげでエルサレムから、各地をめぐってイルリコまで、わたしはキリストの福音を満たしました。20このようにして、わたしはキリストのみ名のとなえられぬところで、福音を伝えることを名誉としました。それは他人の土台の上に建てないためで、21むしろ、「彼について知らなかった人々が彼を見、聞かなかった人々が語ろう」と聖書にあるとおりです。

   ローマ行きの計画

 22このために、わたしはあなた方のところに行くことをたびたび妨げられていました。23しかし今は、この地方にはたらき場所がなくなりました。すでに長年あなた方のところに行く熱望がありましたので、24イスパニアに行くときに行こうと思います。その道すがらあなた方にお会いし、あなた方によってまず幾分なりと心を満たされてから、あなた方にあそこまで送られたいと望んでいます。25しかし今はエルサレムへ行って聖徒たちに仕えます。26マケドニアとアカイアとがエルサレムの貧しい聖徒たちのためにいくらか交わりの徴をすることに同意したからです。27同意したのは異邦人がエルサレムの人々に義務もあるからです。それは、異邦人が彼らの霊のものを共にしたのならば、肉のものをもって彼らに仕える義務があるからです。28そこでわたしはこれを済ませて、彼らにこの実を確かに渡してから、あなた方のところを経てイスパニアへ行きましょう。29わたしは知っています、あなた方のところに行くときは、キリストの祝福に満ちて行くでしょうことを。
 30兄弟たちよ、われらの主イエス・キリストによって、また、霊の愛によって、お願いします。わがために神に祈ってわたしを助けてください。31ユダヤの不信の人々からわたしが守られ、エルサレムのためのわたしのこの務めが、聖徒たちによろこばれますように。32神のみ心により、よろこびをもってあなた方のところに行き、ともに休みえますように。33平和の神が皆さんとともにいましたもうように。アーメン。

   紹介と伝言

16章 1ケンクレアの集まりの執事である、われらの姉妹フィベを紹介します。2あなた方が聖徒にふさわしく主にあって彼女を迎え、彼女があなた方を必要とする場合には助けてください。彼女自身多くの人の、またわたしの、助け手でしたから。
 3キリスト・イエスにあるわたしの協力者のプリスカとアクラとによろしく4彼らはわたしのいのちのかわりにと自分の首をも差し出しました。わたしだけでなく、異邦人のすべての集まりも彼らに感謝しています。5彼らの家の集まりにもよろしく。わが愛するエパネトによろしく。彼はキリストを信じたアジアの初穂です。6マリヤによろしく。彼女はあなた方のために多くの労苦をしました。7わが同胞で同囚のアンデロニコとユニアスとによろしく。彼らは使徒の中ですぐれたもので、わたしより前にキリストを信じていました。8主にあってわが愛するアムプリアトによろしく。9キリストにあるわれらの協力者ウルバノとわが愛するスタキスとによろしく。10キリストにあって試練を経たアペレによろしく。アリストブロの家の人たちによろしく。11わが同胞へロデオンによろしく。ナルキソの家の主にある人々によろしく。12主にあって労苦したツルパナとツルポサとによろしく。愛するペルシスによろしく。彼女は主にあって多くの労苦をしました。13主にあって選ばれたルポスとその母によろしく。彼女はまたわが母です。14アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマスと彼らとともにいる兄弟たちによろしく。15ピロロゴとユリア、ネレオとその姉妹、オルンパ、彼らとともにいる聖徒の皆さんによろしく。16聖い口づけで互いによろしくいってください。キリストのすべての集会(エクレシア)からあなた方によろしく。

   勧めと頌栄

 17兄弟たちよ、あなた方に勧めます、あなた方が学んだ教えに反して、仲たがいやつまずきをおこすものに注意なさい。彼らから離れなさい。18そんな人たちはわれらの主キリストの奴隷ではなくて、自らのの奴隷であり、甘言とへつらいとで純な人々の心を迷わしています。19あなた方の従順はすべての人に伝わっています。そのことをあなた方のためによろこびますが、善にはさとく、悪には潔癖で、と望みます。20平和の神がまもなくあなた方の足の下に悪魔を踏み砕かれましょう。われらの主イエスの恩恵があなた方とともにありますように。
 21わが協力者テモテとわが同胞ルキオとヤソンとソシパテロとから、あなた方によろしく。22この手紙を筆記しましたわたしテルテオからも、主にあってあなた方によろしく申します。23わたしと集まり全体の宿主であるガイオからあなた方によろしく。町の経理係のエラストと兄弟のクワルトからあなた方によろしく。24〔われらの主イエス・キリストの恵みが皆さんとともにありますように。アーメン。〕
 25わが福音、すなわちイエス・キリストの宣教によって、あなた方を強めうる方に、--この福音は長い間秘められた奥義の啓示であり、26今現わされ、預言者たちの書きものにより、永遠の神のおいいつけで、信仰の従順を与えるため、すべての民に知らされました--27このただひとりの賢い神に、イエス・キリストによって栄光が永遠から永遠へとありますように。アーメン。