人を生かす福音

 予期せぬ事故で肉親を失い,ある企業の倒産を身近かに体験させられた友人が地方からたずねて来まして,色々と話し合いました.彼の町だけではないでしょうが,倒産にあった人は病気をするのが普通で,ひどい時はそれがもとで命まで失うそうです.自分が行きつまったという挫折感で心身ともに打撃を受けているところへ,援助したり資金を融通したりした人がやって来て,この穴はどうして埋めてくれるか,と責めつけますので,体がもたなくなるのだそうです.

 その友人は特に体が丈夫という訳ではないのですが,聖書を少し読んでいたので命拾いをしたという朗報を持って来てくれたのです.人一倍責任感の強い彼ですから,肉親の分まで苦しんだらしいのですが,十字架の血ですべてがゆるされるという福音で希望を与えられましたので,心身ともに最悪の事態を切抜けられたのでした.そして,色々うるさいことをいいに押しかける人たちにも出来るだけ温かく愛をもって接したので色々な難所を知らぬうちに通過することが出来たのでした.彼がずっと前から質素な生活をして地味な仕事をしていたという事実も役立ったようです.

 人の罪を負って苦しみ,十字架上でなくなって下さった神の子が,墓の中から復活されたという音信が,すべての人類を新しい生命に導くことが今度のことでも目に見える形で示されたと思います.聖書のいう復活は既にこの世で人を生かす福音としてわれわれが身近かに感知し得るのであって,それだからこそ来世はもっと素晴しいという希望を与えてくれるといえましょう.