宇宙とキリスト

 この7月の下旬に,人類が月に第1歩を印して無事に帰って来たことは何といっても大きなニュースですが,これからも科学や技術は大幅な進歩をとげるでしょう.40年ほど前にはアムンゼンやバードの極地飛行で大騒ぎしたものです.コロンブスらの新大陸発見も15世紀には大事件でした.いずれ,1969年は月へ行ったくらいで宇宙元年といわれたものだと回顧されるでしょう.

 しかし,進歩だけを見て人間の知恵を無限とするのは大間違いです.宇宙の彼方のそのまた彼方に何があるかは人間にはわかりません.天文学者に謙遜なキリスト信徒の多いことは素人への教訓です.

 また,壮挙の蔭に,大国同士の競争とか,宇宙船の軍事化とか,人間の醜い罪の問題がひそんでいないでしょうか.このたびの成功で恐怖におびえる人間も少なくありませんし,ロケットに何兆円を使っておいて自分たちの貧困をどうしてくれると抗議したアメリカ市民もあります.やはり宇宙を征服する人間にも罪の征服はできていないといわねばなりません.

 進歩は結構です.新大陸発見の次の世紀からピューリタンの活動がありましたし,極地飛行は旅客機による日欧連絡へと発展しました.しかし,進歩が人間の罪のために破壊をもたらすことを忘れますまい.原子爆弾を受けた唯一の国民として,われらは罪の破壊性と人類の運命をもっと真剣に考えるべきです.

 どんな罪びとでも救われて新しく生きるようにと,罪のない御子を十字架につけてくださった方こそ宇宙の創造主にいまし,彼のみが罪と死に勝ち得る全能者にいますという真理はこれからますます力を発揮するでしょう.