聖名濫唱を避けて |
戦後3年ほどしてのことです.当時ジュネーブにいましたわたくしは,日本のある教会の指導者からクリスチャン・チョコレートというお土産をもらいました.敗戦日本はキリスト教によって立ち上がるべしとのいわゆるキリスト・ブームもここまで行ったのかと驚きあきれたものです.その包み紙をジュネーブの友人にちょっと見せましたところ,戦後すぐ申し出られた諸国のミッションの援助や帰国勧告に全部ノー・サンキューといったわたくしの行き方がわかる,といって理解や同情が集まったのでした. チョコレートは間もなく溶け去ったようですが,キリストの御名やキリスト教主義による病院や学校にこのごろ問題が多いのも,ひとつにはあまりに政治情勢に影響されたこと,今ひとつには主の御名をみだりに唱えないようにとの十戒(出20:7出20:7 あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかれない。(新共同訳) )に違反していることです.このふたつには根本において文化と福音との混同という共通点があります.文化的な形をよくして勢力を張るために政治と妥協し,主の御名を濫用して文化的なものを大きくしようとするからです.戦後の政治的風潮に乗った人々がこのごろ右や左の波に乗ったりもまれたりしていますし,主の御名をテコに使って事業に手を広げた人々もなかなかたいへんのようです. われらは政治も文化も否定しません.弱いものへの助けとしての秩序は恩恵として率直に受けましょう.そして,隠れたところで,隠れた神を示したもう救い主の御名を讃美しつつ静かに歩みましょう.ヤソ風の吹かないところに,天来の光に温かく包まれる境地があると思います. |