日本のバラ

 日本の花といえば桜や菊などをまず思うのが普通ですが,このごろは日本のバラがヨーロッパの市場にも進出するほど有名になりました.これは低賃金による価格とか貿易国策とかで説明しつくせるものではありません.園芸の学校や遊園地などに栽培されているバラを見ますと,各国から取り寄せたさまざまな品種のほかに,それらをまぜた新しい色のがあります.巧みに配合して日本独特の渋みや深みのある色を出しているのです.このような総合と調和の美がヨーロッパの人をも引きつけるのでしょう.

 われらの先祖は中国から漢文を取り入れて大和ことばと調和させ,漢字を簡易化した仮名を発明しました。そして今日は全国民が読み書きできるようになりました.儒教や仏教も日本でその倫理性が推進されて社会秩序に役だっています.明治以来の文化史も各方面に西洋のものを輸入しつつそれらを同化吸収してよりよいものを作ろうとする方向を示しています.

 キリスト教も,かつてのキリシタンのように西欧の帝国主義と協力するのでなく,また礼拝や教義や組織のような外形の輸入にとどまるのでもなく,人間性の弱さすなわち罪からの解放による新しい社会への希望として日本人ひとりひとりのものになったあかつきにはどんなにすばらしいことになるでしょう.それは夢ではありません.各地で静かに聖書が学ばれて小さな集まりが形成されているという事実は雄弁です.イエス以後聖書や教義がまとまるまで何世紀もかかったのですから,われらもあせらずに歩みましょう.そして色とりどりの真理のバラを作って,神の国の完成という聖なる創造に参加させていただこうではありませんか.