愛国心と国際精神

 戦前から戦後にかけていろいろな国で生活し,最近も何度か国際的な会議に出かけまして,各地で知り合いができましたが,学問その他で国際的な協調精神で仕事をしている人々はそれぞれ自分の国を愛して,自分の国の人として他国の友人と交渉しているのが目につきます.よい国際人は自国から浮き上がっていないのです.逆に国際的な視野をもちますと,自分を育て上げてくれた国への愛が増して,同胞に真の国際状勢を知らせて世界意識を持たせたくなるものです.

 日露戦争のとき,国内では陸に海に連戦連勝と宣伝されましたが,いざ講和のとき条件が悪かったので日比谷に焼打ち事件がおこりました.第1次大戦中の輸出超過で日本は債務国から債権国に変わったのですが,国内は物価が倍増し,米騒動その他世情不安がつのり,軍国主義への道をたどったのです.今日でも国際金融が一部の企業家に牛耳られて一般民衆の生活が乱されるのは困りものです.

 自分の家をいい加減にしては隣近所とうまくゆくわけがありません.問題のある教会を留守にして総会で予算を要求し,日曜の集りを放り出して無教会の理論を展開しても無駄です.

ナザレのイエスは世界の創造主に従ったからこそイスラエルの失せた羊のために労苦を重ね,イスラエル至上主義者とたたかって異邦人の救いという全人類的な解放の道を開いたのです.ああエルサレムと叫んだ彼(ルカ13:34ルカ13:34 ああ、エルサレム、エルサレム、預言者を殺し、つかわされたものを石打ちするものよ、めんどりが雛を翼の下に集めるように、何度わたしはおまえの子らを集めようとしたか。しかしおまえらはそれを欲しなかった。 )は愛国心と国際精神の角度から見ても模範です.根本は隣人愛です.彼の消息を伝える聖書に自国と世界の平和の方向が示されていることをあらためて学びたく思います.