危機突破への道

 エネルギー危機に前号で触れましたが,それはいろいろな危機の一つに過ぎません.国際関係も不安ですし,国内の政治や経済の乱れも危機的様相を呈しています.そして最も恐ろしいのは,世界的国家的に起こる大規模な危機でなくて,ひとりひとりを滅亡へと導く危機です.病気や貧困もそうですが,最大の危険は心の問題です.いいかえますと,心の問題が解決に向かっていますと,体の病気も,経済その他の危機も乗りこえることができます。

 戦後の日本の動きを見ますと,幸いにも大陸の戦火が波及せず,経済的にも成長したのですが,人間の欲望は無限ですから,レジャーその他消費の習慣に振り回されて空虚感を抱きはじめたころ,追い打ちのように物価高や物不足がやって来まして,悲観的な風潮が虚無主義や快楽主義を助長しつつあります.このままでは大きな危機を避けえないでしょう.

 しかしわれらは失望しません.これには根拠があります.心の問題が中心といいましたが,その解決が人間の努力や修養で得られるものでなく,行きづまったときに聖書を通じて示されるものだからです.すなわち,人間は罪を犯す弱いものであるがゆえに,罪のない神の子の死によってのみ救われるという福音がすべての根本です.それによって個人に平安が与えられて心の問題が解決に向かい,あるいは解決を求めて祈る心が与えられますと,地上のものへの執着がとれ,何年かしていままでになかった人間関係ができ,助け合いの道が開けて局面が打開されはじめます.このような小さな隠れたところに危機突破への道があり,それは光りかがやく永遠の世界に直結するがゆえに常に希望を抱くことができるのです.