現状をうれえる |
狂乱物価とか不況とか相次ぐ爆発とか核兵器のこととか国の内外に不安な問題が多くなるばかりで,昭和元禄も終りだという声も聞えて来ます.戦後周囲の状勢が幸して日本が比較的平和のうちに復興し成長しえたのですけれども,それを感謝せずに当然のこととし,あるいは自らの力による成功と思い上ったところへ世界的な不況が襲って来ていろいろなことが挫折しはじめたのです. これは大正から昭和のはじめにかけてと似ています.日清日露の戦争に勝ち,第1次大戦でも有利な立場をえて経済的に成長したのですが,その後の表面的に平和な状勢に圧迫された軍部の反発と国民の高慢心とが結びついて軍国化が進められたのです.結果は恐ろしい戦争でした. これは国情全般のことですが,信仰の世界はどうでしょうか.明治以来内村先生やお弟子の方々が信仰だけで救われる,聖書をひとり学べばよい,組織に頼るな,等々迫害下に血みどろの戦いをつづけられて来ましたが,このごろいろいろな恵みを当然と考え,知らずして組織化が企てられ,学問さえあれば信仰がわかると思ったり,社会改良と神の国とを混同したりする傾向がないでしょうか.与えられたものを感謝せずしてそれを自明の理としてあぐらをかいたり安易に発展したりするのは上にのべたこの世の危険以上に危険です. 罪なくして十字架上に死した神の子によって救われるという原点にかえって,その神の子が地上に来臨されたことを感謝し,神の国への希望に燃えて静かに歩みましょう. ここにこの世の国の行くべき謙遜な方向と一致するものがあります.それだけに聖書の真理を愛する同胞と隣人に伝える熱意に燃えざるをえません. |