経済速力

 陸海空の交通機関で経済速力が重要視されています.エンジンをいっぱいに回転させれば時速何キロまで出せるという性能があっても,実際に運転する場合はその何割かを落としたスピードにするのが普通です.おそすぎれば能率が悪くて不経済ですが,速すぎれば乗員の疲労も器械の損障も激しく,危険率も増して不経済なのでほどよいところが経済速力になるわけです.そして乗員も機械も適当に休ませると安全かつ経済的です.

 ところで,交通機関にかぎらず,個人と社会のあり方はどうでしょうか.何もしないでレジャーを楽しむのは困りますが,幼児のころからせつかれて,早く学業を終え,早く就職し,早く家庭を持ち,早く立身出世して,早く死ぬ人が多くはないでしょうか.勤勉努力はいいのですが,高度成長の行きすぎや公害はどうでしょうか.先進国に自殺率が高いともいわれます.人間が自分たちの生活を豊かにするために作った文化に全速力で振り回されている悲しむべき現象がいたるところ見られるではありませんか.

経済速力というものの意味をいろいろな角度から考えてみましょう.6日間働いて7日目に人も家畜も休め,ぶどう畑も7年目に休ませよという古い安息の制度(出23:10以下出23:10以下 10あなたは六年の間、自分の土地に種を蒔き、産物を取り入れなさい。11しかし、七年目には、それを休ませて、休閑地としなければならない。あなたの民の乏しい者が食べ、残りを野の獣に食べさせるがよい。ぶどう畑、オリーブ畑の場合も同じようにしなければならない。12あなたは六日の間、あなたの仕事を行い、七日目には、仕事をやめねばならない。それは、あなたの牛やろばが休み、女奴隷の子や寄留者が元気を回復するためである。13わたしが命じたことをすべて、あなたたちは守らねばならない。他の神々の名を唱えてはならない。それを口にしてはならない。 )も一種の経済速力です.それを神が創造のときお休みになったからと説明する聖書の神観はすばらしいものです(同20:11出20:11 六日の間に主は天と地と海とそこにあるすべてのものを造り、七日目に休まれたから、主は安息日を祝福して聖別されたのである。(新共同訳) ).万物を創造し,保ち,支配なさる全能者が休みたもう神であることを忘れた現代に,われらは神とともに休み,また働き,神の国の建設という新しい創造の大業に参加させていただこうではありませんか.