ごあいさつ

 昨年の春停年になりましてから丸一年になります.自由に研究に専念したいという望みのかなえられる時を待っておりましたので,いろいろな仕事への好意的なおさそいもご辞退しまして,比較的静かな年をすごすごとができました.停年になったら引き受けますと約束した講義や,学会関係の仕事や国際的な交渉などがつづいたのと,停年だから暇だと思って頼んでくる用事を断るのに暇がかかったのとで案外忙しかったのですが,それでもだいぶ研究も進み,いずれまとまった形で発表する案も具体化しつつあります.

 ただ,全く予期しなかったのですが,25年近く日曜聖書講座をつづけてきました鴎友学園(短大程度の専攻科と高校と中学)の学園長を引き受けることになりました.長い間固辞しつづけましたが,外国ミッションとは無関係なキリスト教主義の学校であり,わたくしの研究活動に支障のない範囲の仕事ということですし,病床の石川しづ先生はじめ役員と教職員全員の一致したご推挙ということでお断りする理由もありませんでした.それに普通の足で家から12分という近距離のことも考えました.教職員の協力体制はりっぱですし,教育機関の管理運営にはわたくしの体験を生かせるでしょう.信州へは従来どおりたびたび勉強に出かけるつもりです.名誉教授としての東大との関係は変りありません.

宗教家にならず平信徒の研究者でありたいという念願を持ちつづけて与えられた道を歩みたく思います.何が待っているかわかりませんが,困難なときは今まで導いてくださった救い主が“のがれの道”(Ⅰコリ10:13Ⅰコリ10:13 あなた方の出会った試みで、世間ありきたりでなかったものはありません。神は真実にいまします。神はあなた方が耐えうる以上に試みられることをお許しにならず、試みとともに、耐えうるよう逃げ道をお作りでしょう。 )を備えてくださると信じます.心身ともに弱いわたくしのために読者諸兄姉がご加禱くださるよう切にお願いするしだいです.